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川上剛(かわかみ つよし)さん:浦川養鯉場 |
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1917年創業の老舗・浦川養鯉場は、「寅蔵三色」「寅蔵紅白」という世界に名立たる優れた名鯉を生み出した。三代目の当主である川上剛氏は、今も途絶えることなくその系統を受け継ぎながら、主に紅白を中心に生産し、全国の品評会で数々の賞を受賞している。
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新潟県小千谷市浦柄にある浦川養鯉場は、1917年に先々代が創設し、私で三代目になります。私は、1978年高校卒業と同時に養鯉業に携わり、最初の三年間は春から秋に掛けて先代の下で修行し、冬の間だけ福岡県・錦翠園で修行しながら過ごしました。その後は、先代と一緒に寅蔵三色、寅蔵紅白などの生産に関わり、錦鯉の育て方「飼育能力」と錦鯉の見方「選別能力」を学びました。この辺りも2004年の中越大震災の被害に合いましたが、私どもは幸いにも親鯉への影響はなく、現在は、紅白、昭和三色、大正三色、白写り、五色等を生産しています。
浦川養鯉場の代表鯉である「寅蔵三色」は、先代・川上弘氏が1949年から1952年までの間に生産した寅蔵三色を基盤としています。親鯉が事故で死んでしまったため元親での生産は途絶えましたが、その後も系統が残る親鯉を使い、先代、私と引き継いで生産しています。寅蔵三色の特徴は、動かない墨です。昔は、墨があまりきれいに出なかったものですから、成長しても動かない寅蔵の墨は大正三色の美しさである壺墨をきれいなまま保持することができました。現在は、体型があまり大きくならないこともあり生産を減らしていますが、墨質自体は寅蔵の良さが受け継がれています。
もう一つの代表鯉である「寅蔵紅白」は、10年前に大日紅白と千葉の村田紅白を掛け合わせて生産した寅蔵紅白を基盤としています。寅蔵紅白を生産する際には、親鯉の選定を重視し、雄親、雌親とタイプの異なる紅質を持つ親鯉を選定して掛け合わせるようにしています。例えば、雌親が明るい緋であれば雄親を濃い緋のものを使う、雌親がトロンとした紅質であれば雄親は硬い紅質のものを使うなどという工夫をしています。私が紅質において最もこだわるのは、紅の照りです。ニスを塗ったようなねっとりとした艶のある照りをもつ紅質の紅白が理想です。
私が錦鯉生産で一番重点を置いているのは、親の選定です。先に述べたようにそれぞれに工夫はしているのですが、やはり最終的には品評会が目標ですから、いくら質がよくても模様が良くても線の細い鯉を親鯉に選ぶのはよくないと思っています。まず、体型に幅があって、伸びる系統であることを選定基準に置いて選びます。最近の品評会では、体型が大きく堂々とした姿でなければだめだと思うからです。その点で、2002年第38回(社)全日本愛鱗会『全国大会』に出品した紅白は7歳時で既に90cmでしたからよい鯉だと思います。
今後の目標は、やはり全国品評会で総合優勝をとりたいです。今は若くていい鯉もどんどん海外に出て行ってるので、日本にいる鯉に限定されている全国品評会もそのうち世界中から鯉を集めた世界大会になっていくのではないかと思うのです。だから、いつになるかわかりませんが、世界大会で総合優勝するのも目標です。
海外の愛好家の方々には、いい錦鯉を楽しむ為にはいい池が必要であるということをもう一度思い返して欲しいです。やはりいくらいい錦鯉を飼ったとしても、飼育環境である池そのものが悪いと、錦鯉がすぐに悪くなります。錦鯉そのものにお金をたくさん掛ける愛好家は多いですが、池にお金を掛ける愛好家はあまりいない印象があります。盲点かもしれませんが、錦鯉を楽しむためには「いい池」で飼う必要があると思います。我々もいい鯉を作るため精一杯努力するので、愛好家の方々も池の管理を丁寧に行ってもらえればと思っております。
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