平沢久司(ひらさわひさし)さん:丸堂養鯉場
全日本錦鯉振興会新潟地区長
平沢久司さん

専門学校の学生を受け入れるなど新しい取り組みにも積極的な平沢氏は、大日ブランドを確立させたスタッフの一人として18年間活躍していた。1970年に独立して以来、質を重視した鯉の生産に取り組み、人々の脳裏に焼きつくような美しい鯉を目指している。


大日養鯉場勤務時代の平沢さんと他のスタッフ私は中学を卒業してすぐ、大日の3人目の従業員として働き始めました。元々、父親が養鯉の仕事をしていましたので、いつかは自分も独立するつもりで働いていました。当時、まだ無名だった大日ですが、今や誰もが知るブランドとなりました。その大日の発展を身をもって体験できたことを幸せに思っていますし、そこで得た数々の貴重な体験は、私にとってとても大切で、大きな財産だと思います。
昔の錦鯉は今ほど種類もなく、単に色がついていて模様がきれいであれば良いとされてきました。しかし今は、鮮やかさや美しさに加えて、体の線がやわらかく、ふくよかで、大きさのある鯉が良いとされる傾向にあります。その基盤となる鯉を作りだしたのは、やはり大日だったのではないでしょうか。大日の先代には、鯉の見方や作り方はもちろんのこと、鯉の性質、性格などの違いから、その鯉にあった飼育方法や方向性の見極めなど、たくさんのことを教えていただきました。それらの貴重なノウハウは、私の養鯉に今も根強く生きています。

平沢さん親子1970年に独立し、1974年からは長男の利弘、2000年からは長女の慶子が、錦鯉の仕事を手伝うようになりました。二人は昔から鯉が好きだったようで、野池に来ては手伝いをしており、さすがに鯉の扱いには慣れていました。以前は、ただ鯉に触れたくて手伝っていた子供たちでしたが、今では「品評会で総合優勝できる鯉を作る!」と、意気込むほどの鯉師になりました。

専門学校卒のスタッフ
今、うちには2人の若い従業員がいます。彼らは、それぞれ専門学校を卒業してすぐにうちで働きはじめました。将来は生産者になるのか、あるいは店を持って販売の仕事をするのか、現時点ではまだわかりません。しかし、鯉を扱う仕事をする上で、生産は基本であり、とても大切なことですから必ず今の経験が生きるときがくると思います。

丸堂三色養鯉業には、ハウス1棟建てるだけで軽く1000万円、2000万円という費用が必要ですから、私が会社の従業員という立場から独立をして生産者になる決意をするときにも、やはりかなりの覚悟を必要としたものです。今、私の池では御三家をメインに、銀鱗紅白、茶鯉、白写り、孔雀、黄金、浅黄、金松葉など10種類の鯉を作っています。私は、一目見ただけでその美しさに深く感動し、「うわ!錦鯉というのは、なんて美しいのだろう!」と言っていただける、人々の脳裏に焼きつくような鯉を作りたいのです。例えば、ひとくちに紅と言っても、私が作りたいのは、他を圧倒するくらい鮮やかで、伸びのある美しい紅を乗せた鯉です。また、色だけでなく体型や大きさも重要です。今は大きい鯉が主流となっており、品評会で総合優勝を獲得する鯉は、比較的大きな鯉が多いです。しかし私は、例え大きくなくても、大きな鯉を圧倒するような艶やかさや美しさを兼ね備えたバランスのよい鯉を作り、見ていただいた人たちに感動を与えることができれば嬉しいです。そのような質の高い鯉を品評会に出し、総合優勝させたいと思っています。

家族での選別質は系統に強く影響され、系統は親のかけ合わせによって決まります。質の高い鯉を作ることは、生産者として腕の見せ所です。もちろん、みなさんの育て方次第で、その後の質が上下することも確かです。愛好家の方々が、鯉の質を向上させるためには、飼育方法や体調管理など、その鯉に適した環境を作ってあげることが大切です。鯉は水質が悪くなると食欲が弱くなってしまいます。大切なことは、いつも鯉が餌を欲しがるような環境を作ってあげることです。
これからも、愛好家の方々が驚くような、すばらしい質を持った鯉をたくさん作っていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。


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(取材日:2005年9月14日)

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