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間野太(まのふとし)さん:(写真左)
間野茂(まのしげる)さん:(写真右)
大日養鯉場 |
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全国大会の長い歴史の中で、1991年に全体総合優勝を果たした昭和三色は、天下の名品・大日昭和として特に有名な存在である。この名血を引き継ぎ、間野太、弘、茂の三兄弟がいま一度の総合優秀を目指して情熱を傾けている。大日昭和の当歳はたて鯉的な要素が多く、どのように変化するかが期待される。
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この仕事は父親が始めましたから、自分たちにとっては生まれたときから当り前のように鯉がいたわけです。いま自分たちは御三家しか作っていませんが、父が作ってきた系統をちゃんと残しながら、さらに自分たちが作っていく系統によって、誰が見ても「あ、これは大日の鯉だね。」と言ってくれるような強烈な個性をもった鯉を作りたいと思って努力しています。例えば昭和三色だったら、この昭和の黒は大日だから出せるといったような特徴のある鯉が作れると楽しいですね。どの生産者が作った鯉でもみんな一緒というのでは面白くないでしょう。新潟は錦鯉を生み出したブランドだからこそ、生産者の技術が常にどこよりも進んでいて、品種改良も行われて、年数が経てば経つほど生産者ごとの鯉の特徴がより明確になってくることが重要だし、それは愛好家にとっても楽しいことだと思います。現実に最近の品評会を見ても、昭和三色の黒が随分と強くはっきりしてきましたよね。
自分たちは幸いに父親が良い親鯉を残してくれたこともあって、種別日本一をとった昭和三色の親とか、国魚賞をとった親から作った鯉の良さはすぐに分かる。しかし、父が残してくれた親鯉だけに頼っていても、その親鯉が20歳とか高齢になってくると孵化率も落ちてくるし、形も悪くなってきますから、やはり自分たちがしっかりとした親を作っていく努力を怠ってはいけないんです。これは大日の特徴でもあるんですが、雌の親鯉はもちろん大切ですが、私たちはしっかりした雄を育てることに特に力を入れてきました。そうやって作ってきた親鯉がそろそろ4歳、5歳という年齢になってきましたから、今からが楽しみだし、常に新しい世代の優れた鯉を作っていくのが生産者の役割りだと思いますね。
形も大切ですが、色質にもこだわる。それによって素晴らしい紅質や黒質をもった形の良い鯉ができる。品評会で大日の鯉の前で皆さんが思わず立ち止まって目が釘付けになってしまうようないい鯉を作りたい。そのためには生産者として感性を磨く。
選別をする場合も、いま見てくれが悪くても将来良くなると判断してたて鯉を選べるかどうかは感性ですし、感性には個人差があるから誰が正しいかは実際年数が経ってみないと判断できない。それが大変だし面白いところです。生産者だからこそ言えることかも知れませんが、これからどんな新しい鯉が生まれてくるか誰も知らない未知の領域なんです。
鯉を作る作業は楽しいですよ。良い親から生まれた鯉だとなおさら楽しい。錦鯉は自分自身で育てるとはまるんです。1年泥池で飼って、池上げをやって、これが自分の鯉だなんて思ったらもうやめられない。秋の池上げが一番楽しいですよ。だから頑張れるんです。朝早く起きて網引きしますが、うちは新潟の池だけで70面あるから年3回選別するということは合計210回網を引かなければならない。でも、鯉はやればやるほど結果が出ますから楽しいですよ。やはり一番大切なことは愛情を込めて育てることだと思うし、新潟の生産者は例外なく錦鯉を心から大切にして愛情を注いでいます。だから素晴らしい錦鯉を皆さんにお届けできるんです。
どこの国の愛好家でも、私たちが愛情を込めて作った錦鯉をとにかく愛情をもって飼って欲しいですね。鯉を大切にしてくださる方に飼ってもらえることが一番私たちは嬉しいですから。錦鯉は生き物ですから、一尾一尾の鯉がもっている力が表現できるような環境で飼って欲しいですね。どの国、どの地域に行っても確認できることですが、本当に鯉が好きで飼っている愛好家は、自分の鯉をよく観察しているし、濾過槽の手入れとか、水の管理とか、病気になったときの対応とか、実にしっかりやってますよ。
もちろん大きさにしても形にしても、生産者によって目指すところが異なるのと同様に、愛好家の楽しみ方も色々あっていいと思います。池のない環境だったら室内で水槽で飼うのもいいと思いますよ。しかし、どんな飼い方をしようと相手は生き物ですから、健康で長生きできるようにケアしてあげて欲しいですし、私たち生産者と愛好家がもっと情報を直接交換してお互いにレベルアップしていける環境が必要だと思います。
その意味でINPCの存在は貴重だと言えます。 |
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