野上久人(のがみひさと)さん/野上養鯉場

野上久人(のがみひさと)さん

長岡市六日市町にある野上養鯉場の現在の当主・野上久人氏は、日本最高峰である大日養鯉場のスタッフとして15年間修行を積み、1994年に跡を継いだ。2004年の中越大震災で親鯉を数本失う被害にあったが、きれいな「野上の鯉」を作るという熱意で立て直し、現在は紅白、昭和三色を生産している。


選別をする野上さんとご家族野上養鯉場は、1968年に先代・野上久之が創設しました。私の家はもともと農家でしたが、先代が大日養鯉場の間野実氏の姉と結婚し、法事や祭礼など事あるごとに錦鯉の話を聞くうちに関心を持ち、少しづつ錦鯉を生産を始めたことをきっかけに養鯉場を設立しました。私ももちろん小さな頃から錦鯉に触れてはいましたが、本格的に始めたのは高校卒業後の1979年に大日養鯉場に修行に行ってからです。その後、15年に及ぶ修行期間を経て、1994年に実家の野上養鯉場の跡を継ぎました。現在は、2004年新潟中越大震災で親鯉を数本失った影響もあり、「私の一番できる鯉をやろう」と創設当初から生産していた紅白と昭和三色の二品種に限定して生産しています。

紅白やはり、当時日本最高峰であった大日養鯉場から学ぶことは多かったです。特に、先代・間野実氏からは色々学びました。あまり言葉では教えてくれませんでしたが、先代の行動に付き添いながら、「錦鯉を見る目」「錦鯉に対する接し方」「お客さんに対する接し方」などを随時見て学びました。そのなかでも、「錦鯉を大事にする姿勢」について学んだことが今でも大きな財産として残っています。誰でも大事に扱う高い鯉だけでなく、どんなに安い鯉でも良い鯉のように扱い、病気になったらどんな悪い鯉でも一所懸命に助ける姿勢をもつことの大切さは今でも忘れません。また、「自分達の作っている錦鯉というのは芸術作品なんだから、安心して見れるように」とお客さんを迎え入れる体制にまで気を配り、ビニルハウス内を丁寧に整理整頓して錦鯉の芸術性を高めていた姿は本当に勉強になりました。

亀の甲紅白独立後一番苦労したのは、親の選定、掛け合わせです。長い間、大日の先代のやり方を見ていたのでわかっていたつもりでしたが、いざ自分でやってみるとやっぱり違いました。鯉というのは人間が作るものではないですから、同じ親鯉を使っても自分でやるとちょっと違うものができます。だからこそ、自分で自分なりに考えた『野上の鯉』を作りたかったのです。「おまえなぁ、もう少しじっくり飼ってみろ。一年かなんかの結果だけでなく、自分のもった鯉を自信をもって飼え」という大日の先代からもらったアドバイスを心にとどめ、一年一年真剣になって掛け合わせに取り組み、まずは世間よりもお世話になった大日養鯉場の先代に認められるような錦鯉を作るべく頑張りました。

養鯉場での野上さん現在は、紅白を主体に生産しています。紅白を作り続けるのは、もともと好きということもありますが、大日養鯉場に入って一年目に見た「亀の甲紅白」との出会いがきっかけです。今でもその時感じた強烈な印象を覚えていますが、濃い赤というより桜紅を赤くしたまるでステンドグラスを貼ったような紅質でした。その後、様々な銘鯉を見てきましたが、これに勝る錦鯉には出会ったことがないと思うくらいの素晴らしい紅白でした。だからこそ、今でも亀の甲紅白のようなきれいな錦鯉作りにこだわっています。体が大きいというのは確かに魅力ですけど、錦鯉は芸術品なのでまずはきれいでなくてはいけません。ですから私は、大きいなと言われるよりきれいだなと言われることが一番重要だと思っています。

今の目標は、いい鯉を作るだけでなく、品評会で賞を獲れるような錦鯉を作って、名前を確立することです。そして、この鯉は素晴らしいから、中羽でもいいから欲しいと言われるようにしたいですね。中羽でいいからではなく、中羽でもいいから欲しいと。やはり私は新潟の生産者ですから、愛好家の皆様に「新潟の錦鯉はいいなぁ」と思っていただきたいのです。新潟は錦鯉の発祥の地ですから、品評会で賞を獲れる鯉もいるし、様々な品種の様々な錦鯉がいるからやっぱり新潟に行きたいなと思われなくてはいけないと思っています。

海外の愛好家の皆様、震災後、新潟の生産者は頑張っていい鯉を作っていますので、とにかく一度新潟に来てください。そして、新潟で自分の気に入った鯉を選び、自分の鯉として大事に育ててください。


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(取材日:2006年3月15日)

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