嘉瀬清(かせきよし)さん:越路養鯉場

 

新潟の錦鯉生産者は各自が強い個性と独自のポリシーをもっている。御三家を中心にした錦鯉の美を追求する生産者がいる一方、常に新しい品種の作出にチャレンジする生産者も存在する。越路養鯉場は、さまざまな品種の鯉を創造することに力を注ぐ生産者で、その池はとてもカラフル。銀河、紅九紋竜を生み出した養鯉場として知られ、新品種の固定に大きく貢献している。

嘉瀬清さん

越路養鯉場私はもともと板前をしていたのですが、20歳頃から趣味で鯉を作るようになり、25歳になった1969年に越路養鯉場を設立して、鯉を専業としました。うちでは、誰も発想できないような新しい品種を作り、みなさんに喜んでいただきたいと、日々研究を重ねております。また、新品種を作る際には青木さんと共同で行うことが多く、できあがった鯉は災害などに遭遇しても被害を最小限に抑えられるようにお互いの池で育てるようにしています。

紅九紋竜新品種を作るにはどんなにがんばっても最低3年、商品にするには5年か、それ以上の歳月を要します。私は品評会を見て回っているときも、お酒を飲んでいるときも、常に新しい鯉を作るための親鯉の掛け合わせについて考えています。うちではよく光りものを作るのですが、まず親鯉となれるだけの素質をもった光る鯉と光らない鯉を掛け合わせます。すると中途半端な光を持った鯉が生まれるのです。次にこの中から親鯉として使えるオスを選び、よく光るメスにかけるときれいに光る新品種ができあがります。私は「銀河」という品種をこの方法で作り上げました。銀河は孔雀に羽白をかけたもので、きらきらと輝く模様は本当にきれいです。また、菊水と九紋竜をかけて「紅九紋竜」という鯉も作りました。九紋竜は本来緋が乗らない体なのですが、はじめにドイツ昭和とかけてやることで紅の血をもった九紋竜を作り、次にそれを菊水とかけることで九紋竜の体に緋を乗せることに成功したのです。そして、紅九紋竜を光らせたのが輝黒竜です。これは青木さんが作出しました。

養鯉場での嘉瀬さん新しい鯉を作ると、選別も品種ごとに変わってきます。中でも輝黒竜の選別は特にユニークで、通常真っ黒な稚魚は残さないのですが、輝黒竜は生まれてから約40日後の第一選から真っ黒な稚魚だけを残します。一見真っ黒な体なのですが太陽に透かすように強い光を当てて見ると墨の奥に模様が入っているのが見え、成長するに従って徐々にその墨が抜けて下に隠れている模様が浮き上がってくるのです。当歳で墨が抜けるものもありますし、2歳、3歳で抜けるものがあるので、その差は個々によって大きく異なります。ですから、まだ墨が落ちていない輝黒竜の稚魚を買い、飼育するというのも愛好家の皆さんにとって楽しみ方の一つだと思います。ある日を境に徐々に墨が抜けはじめ、真っ黒だった体から美しい模様が現れてくる輝黒竜の成長を観るのは素晴らしいですよ。

越路養鯉場錦鯉の原産地である新潟には、古くから続く伝統ある品種を作る生産者もいますし、私のように常に新しい品種を作る生産者もいます。たくさんの人がいろいろな品種を作っているので、新潟に来れば全ての品種が揃うと考えてまず間違いないでしょう。震災によって大きな打撃を受けましたが、生産者同士が協力し合い、新潟の鯉を守っていこうとがんばっています。私たちの作った鯉が愛好家の方々に喜んでいただければ幸いです。


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(取材日:2005年10月28日)

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