女たちは白飯の弁当を男たちに持たせ、自分たちはかゆや豆飯で耐えながら磨耗したツルハシを峠を越えて鍛冶屋に運んだ。そして昭和24年(1949年)5月1日、午後8時20分。ツルハシの一撃に反対側からの風が吹き抜けた。それから50年間に渡り、近代的な新中山トンネルが開通するまで手掘りの中山隧道は村の生活を支え続けた。 2004年10月23日に発生した新潟県中越地震もこの中山隧道を破壊することはできなかった。数箇所の岩とモルタルの剥落はあったものの中山隧道の通路は確保されていたのである。
16ミリ カラー モノラル 83分 第1回文化庁文化記録映画優秀賞 2003年度第77回キネマ旬報ベストテン文化映画5位 新潟日報文化賞 文部科学省選定 土木学会選定 土木学会賞 社団法人 日本道路建設業協会推薦
16年間という歳月をかけ、人力だけで、しかも一人の死者も出さずに中山隧道を完成させたのは山古志村の人々の不屈の精神力と家族愛そして郷土愛であろう。それらは世界最高品質の錦鯉を生み、震災に耐えながら養鯉業を続ける生産者たちに受け継がれている。
今回、この中山隧道の歴史はドキュメンタリー映画として甦った。 1998年11月から約4年かかって完成した「掘るまいか」の武重プロデューサーと橋本監督に話を伺った。(取材日:2005年8月3日)